画像

コラム

セルフマネジメント

「今このとき」に戻る──マインドフルネスと依存症からの回復

カウンセリングのイメージ
目次

はじめに──「苦しい瞬間に思い出してほしい考え方」としてのマインドフルネス

以前のコラムでもご紹介したように、依存症からの回復のプロセスでは、「今日一日」という考え方があなたを支えるヒントになる場合があります。

「今日一日」の力
──依存症回復の小さな一歩


「一生やめ続けなければならない」と思うと気が遠くなるけれど、「とりあえず、今日だけ」と区切ることで、少し気持ちが軽くなる。

その「今日一日」の力を支える根底には、実はマインドフルネスの考え方が息づいています。

たとえば、誘惑や不安に襲われそうなとき、「深呼吸をして、“今このとき”に戻る」。

これはまさに、マインドフルネスの実践です。

マインドフルネスとは、過去や未来にとらわれず、今この瞬間の体験に意識を向け、評価や判断をせずに、ありのままを観察し受け入れる姿勢のことを言います。その姿勢の継続は、過去を悔やまず、未来を恐れず、「今、ここ」を生きることにつながっていきます。

「今日一日」という実践が、未来の重荷を手放すことを助けてくれるように、マインドフルネスもまた、「今このとき」を丁寧に生きる力となり、回復の一歩一歩を支える土台となるものなのです。

マインドフルネスとはなにか?

マインドフルネスとは、仏教の瞑想にルーツを持ちながらも、宗教色を取り除いて心理療法や医療の分野でも用いられている実践方法です。

特別な道具も場所も必要ありません。

たとえば、次のような行動がすべてマインドフルネスの実践になります。

  • ゆっくりと呼吸を感じる
  • 食べ物の味や香りに意識を向けて食事をする
  • 散歩中に、足裏の感覚や風が肌をなでる感覚に気づく
  • 頭の中を流れる考えや感情に、ただ気づきながら見守る

ポイントは、「良い」「悪い」と評価せず、ただ気づいて、受け入れること。

不安もイライラも、「そう感じているんだな」と認めるだけで、少し距離が取れることがあります。

なぜ依存症回復に役立つのか?

依存症という病は、「今この瞬間の苦しさから逃げたい」という気持ちと深く結びついています。

不快な感情、孤独、不安、ストレス——

そういった感覚に直面するたび、飲酒・ギャンブル・ネット・買い物などの行動で紛らわせようとしてしまう。その行動によってしばしの快感と安堵を得て、行動が繰り返されるようになってしまう。

それが依存のループです。

マインドフルネスは、そのループを断ち切る“間”をつくる方法でもあります。

たとえば:
「嫌なことがあった」→「スマホゲームで気を紛らわせよう」

という自動反応のかわりに、
「あ、自分はいまイライラしてるんだ」とまず気づく。

そして、「深呼吸をしてみよう」「ちょっとその感情を観察してみよう」と、一瞬立ち止まる。

この一瞬が、選択の自由を取り戻す瞬間です。

行動に移る前に“気づく”というワンクッションを置けるようになることは、依存症からの回復の大切な助けとなってくれます。

具体的な実践方法

マインドフルネスは、習慣化することで力を発揮します。

よろしければ、以下のような簡単な実践から始めてみてください。

朝:1分だけ呼吸に意識を向ける
ベッドを出る前に、目を閉じて、呼吸の出入りに1分間だけ集中してみましょう。
雑念が浮かんでも大丈夫です。もう一度、呼吸へと意識を戻してみましょう。

日中:感情の波に気づいたら、ラベルを貼る
「不安」「イライラ」「さびしさ」「欲求」……
浮かんできた感情に、そっと名前をつけてみましょう。
それだけでも、感情を少し冷静に眺めることができ、飲み込まれずにいられるかもしれません。

夜:1日の終わりに「気づき日記」
今日の中で、自分の感情に気づけた場面を1つだけ思い出して書いてみましょう。
どんな小さなことでも構いません。

「今日一日」とマインドフルネス

「今日一日」という回復の知恵と、マインドフルネスの実践は、非常に親和性があります。

「一生やらない」ではなく、「今日だけやらない」。

「ずっと我慢」ではなく、「今だけ向き合ってみる」。

このように、時間軸を短くして、「今このとき」に戻る力を養っていくこと。

それが、依存の習慣に巻き込まれない心の支えとなってくれます。

苦しいときに、「いま自分は苦しい」と気づけること。

その気づきがあるだけで、衝動がやわらぎ、選択肢が広がっていきます。

おわりに──“今”を生きる力をあなたへ

依存症の回復に必要なのは、完璧さではありません。

今日一日を、少しだけ丁寧に、意識的に生きること。

それを重ねていくことが、何よりの力になります。

マインドフルネスは、その一歩を支えてくれる、大切なパートナーです。

“いまこの瞬間”に戻る練習を、今日から少しずつ始めてみませんか?

当相談室の心理士は、自身もマインドフルネスの実践と探求を続けています。

カウンセリング自体が、人が自分の心や現実への気づきを深めていく営みであり、私自身がその実践を丹念に行っている必要があると考えているからです。

あなたたが“今”を生きる力を身につけるお手伝いができたらと思っています。

いつでも、相談室でお待ちしています。お気軽にご相談ください。

あなたの「今日一日」が、少しでも穏やかでありますように。

```