「気軽につながれること」と「届きにくさ」──オンラインカウンセリングの限界と注意点

目次
「オンライン」のカウンセリングはいいことばかりか?
自宅で、安心して、気軽に受けられるオンラインカウンセリング。
前回のコラムではカウンセリングをオンラインで受けることのメリットを取り上げました。
自宅で、安心して、気軽につながる
──オンラインカウンセリングの便利さとやさしさ
しかし、オンラインは対面のカウンセリングと比べていいことばかりかというと、そうでもありません。オンライン、対面、それぞれの良さがあります。
多忙な日々や移動の難しさを抱える方にとって、大切なこころの支えとなる一方で、オンラインという形だからこそ、届きにくい声や、見えにくい表情もあります。
このコラムでは、オンラインカウンセリングの限界や注意点について、利用される方の視点に立ちながら、整理してみたいと思います。
1. 「非言語情報」や「微細な変化」が伝わりにくい
対面カウンセリングでは、言葉にされない「空気」や「間(ま)」、「わずかな表情の変化」なども伝わりやすく、大切な手がかりになります。
しかしオンラインでは、対面している時よりも、沈黙のニュアンスやちょっとした表情の揺れなどが伝わりにくくなることがあります。通信環境がスムーズでない場合などには、さらにそうした情報の伝達の難しさが生じてくることもあります。
とくに、深く心の内側に触れる話題では、その微差が対話の質に影響を与えることも。
カウンセラーは注意深く聴き取りますが、やはり直接会っているときとは異なる難しさがあります。
2. 「家」という空間が必ずしも安心とは限らない
オンラインの利点として、「自宅などの安心できる場所から話せる」ことがよく挙げられます。
けれど実際には、自宅が必ずしも「安全で落ち着ける空間」であるとは限りません。
家族に話を聞かれたくない、プライバシーが確保できない、小さな子どもがそばにいる──そんな状況では、話したくても話せないというジレンマが生まれます。
3. 緊急時への即時対応には限界がある
オンラインカウンセリングは、予約制で提供されるケースが多く、緊急性の高い状態にすぐ対応できるとは限りません。
- 今すぐ助けてほしい
- 命の危険を感じている
- 強い混乱状態にある
そうした場面では、オンラインの枠を越えた支援(精神科や救急、地域の支援機関など)につながる必要があります。
画面の向こうでは限られた情報しか得られないからこそ、カウンセラーも「安全」の確認に細心の注意を払っています。けれど、緊急事態には物理的な距離が壁になってしまうというオンラインの限界があります。
4. 「通信環境」や「オンラインへの慣れ」にも左右される
カウンセリングの質には、スムーズな通信環境が確保されているかどうか、オンラインでのやり取りに馴染めるかどうか、といったことも影響を与えます。
- 通信環境が安定していない
- 操作に不慣れでうまく接続できない
- 画面越しに話すこと自体に強い抵抗がある
そういった場合、対話の流れが分断されたり、十分に話せなかったと感じてしまったりすることもあります。
誰でも気軽に使えるようになってきたとはいえ、IT環境に馴染みのない方にとっては、オンライン自体がハードルになることがあります。
5. 「話せるけれど、気配までは感じにくい」―もどかしさを感じる距離感
カウンセラーは、画面のこちらにいてもあなたに心を寄せています。
それでも、目の前に「人」がいる安心感──温度や気配のようなものまで、しっかり届けるのはなかなか難しいことです。
- ふと涙がこぼれたとき、そっと横にいてほしい
- 沈黙の中にある苦しさを、言葉にしなくても受けとめてほしい
そんな瞬間の「身体性」や「空間の共有」は、やはり対面にしか宿らない要素かもしれません。
おわりに──限界を知り、有効活用する
オンラインカウンセリングには、確かに多くの利点があります。
それと同時に、オンラインだからこそ生まれる届きにくさや、不自由さがあることも、また事実です。
大切なのは、限界やデメリットも知った上で、ご自身にとって有効になる形で活用していただくことです。
オンラインと対面、それぞれの特徴を理解していただいたうえで、自分にあったペースと方法で心の声に向き合い、ほんとうの意味での安心につなげていただけたらと思っています。
よろしければ、メリットとも見比べていただき、ご自身にあった形態を選んでくださいね。
自宅で、安心して、気軽につながる
──オンラインカウンセリングの便利さとやさしさ